つい先日発売された文庫版『ブレイブ・ストーリー』です。上巻を読み終えました。
3分冊なのに、上下2分冊だと思い込んで間違って買ってきちゃった。
後で中巻買ってくる。
以下、ややネタバレ。
上巻ではまだ『幻界』は垣間見える程度。
主人公のワタルがようやくその世界を旅する資格を得た段階までしか、ストーリーは進みません。
そのかわりというか、ワタルが住む町や友達、家族の背景描写は、半端なく丹念で現実的です。
気の短い人は「いつになったらファンタジーになるんじゃーーっ」ってプチいらいらすると思う(笑)。
このワタルの身の回りの細かく、がっちりと組み合わさっていたピースが
1つ抜け2つ抜け、たった数ヶ月で完全に崩壊してしまう。
「ワタルの両親みたいな親っているよね~」と思いながら読んでいたので、
家族があんなことになってしまって、ワタシも相当、ショックでした・・・
中途半端であれ大人の分類に入る立場なので、ワタルが父親と2人だけで会ったときの、
父親の言葉にもんんんのすっっごい怒りを感じながらも、お父さん、わかるよ・・・・って部分もあって
こう、自分の中の子どもの部分と大人の部分が引き裂かれるような感じで、
メチャメチャしんどかったです。
「現実世界に自力で解決できない問題を抱えた子どもたちに、異世界の扉は開かれる」―という
ファンタジーのパターンにはシッカリはまった物語ではあるけれど、
この「自分ではどうしようもない危機」を、リアルに描かれるとこんなに苦しく痛々しいものなのか・・・と。
ワタシが上っ面だけで理解してた気になってた部分を、生々しく突きつけられた上巻でした。
海外ファンタジーでは、その危機の辛さが結構アッサリとしか触れてなかったり、
やたら主人公が前向きだったりして(笑)読者に伝わりにくい面があるかもしれません。
やっぱり現代日本は、前世紀のイギリスなどよりも異世界から遠いんでしょうね。
だからそこに旅立つには、主人公が今にもつぶされて死ぬくらいのものすごい
負のエネルギーを溜めないと、飛んでいけない場所なんだと思います。
やっと幻界に入って、順応しようとゲーム知識を駆使して(笑)必死になってるワタルが
とっても「生きてる」感じがして、ホッとしました。うん、やっぱり、アチラの世界ってそうじゃなきゃね。
もちろん冒険を終えた後には、ワタルの世界においても
―元サヤに納まるって形じゃなくても、ワタル・ミツル・香織に何か未来が見えてくるような、
救いが用意されていると信じています。
だって、宮部さんだもの・・・(笑)