「なぜ陰謀論は生まれ、信じられてきたのか?」
保元の乱~本能寺の変~関ヶ原の戦いまで 日本史上、主に中世の「歴史が動いた」有名な出来事に関する俗説・通説を引きながら読み解いていく。
人物関係の図があり、事件の概略、「一般にこう言われている内幕」もまず始めに解説されているので、よく知らない事件についても普通に学ぶことができます。
その後、「さて、果たしてそんなにわかりやすく説明できることなのでしょうか?」と、いわば「チャブ台返し」的にw 史料に基づく現在もっとも確からしい説を読むことが出来ます。
個々の事件について 私が述べると細かい間違いを生むので...、全体から汲み取れることは
- 事件の結果、最も得をした人物が黒幕。…と人は思いたがるものだ。
- ひとりの人物、あるいはひとつのグループが意図した計画どおりに、現実の事柄が運ぶことなど、ない。
- たとえ同時代の文書に残っていても 「後付け」である以上、書いた人間の立場による忖度があり、事実が書かれていると素朴に信用は出来ない。
- 事象は複雑にさまざまな要因がからまっている。すっきりと飲み込める原因などは、ありえないのである。
『この事件には隠された意味がある』『知られていない黒幕がいる』などの「陰謀論」は、エセ医療知識ほど直ちに、人の命にかかわるものではないかもしれない。
しかし今、広く社会に害をおよぼすものになりつつある。その危機感が著者がこの本を著すことになった強い動機なんだ。というのが伝わってきました。
世界的なポピュリズムの台頭で、起こりつつある 「この社会に、絶対の『敵』がいる。その『敵』を殲滅駆逐すれば平和が訪れる」 という思想。
あとがきを読むと、それを視野に入れて書かれてることがわかりました。
陰謀論は、「因果関係が単純で理解しやすい。」「私だけが知っている、本当の歴史がある」 という、優越感を与えてくれる。『真実』『真相』という甘美な言葉。ついでに、その『真実』『真相』を共有する者の間にできる、結社的な親密さ。ネットを見渡すとそれに「染まっている」人々には、共通したものがないだろうか。陰謀を信じるグループの発生は、選民思想や分断を生み出す原因の一つになっていないか。
「歴史から学び過ちを繰り返さない」ために、活かせると思いました。
「応仁の乱」「観応の擾乱」より先に コチラを読み、それから後二冊を読むと事柄や人物の関係が入ってきやすいかもしれません。どちらの乱にも触れているので。
というか私が『応仁の乱』を先に読んでだいぶ混乱したクチなので「この本を先に読めばよかった」と思っちゃった(刊行順は「応仁の乱」が先なのでそりゃそうなんですが) もう一度読むぞ~。
↑ 『応仁の乱』、「読んでみたら何でそんなに売れたのかわからない」 っていう方多いですよね! 「こんな原因も結果もよくわからないgdgdな戦があるのか...。いやたいていの戦争はそうだな...」という ”諦観” を持つに至ることができる、というだけで 私にとっては名著です...。
この本よりは、すごくわかりやすいですよ、今回紹介した本。