ドアの猫穴

日々思うこと・感想文・気軽に出来るボランティア情報とか書きます。

映画 『エゴイスト』 観ました

『エゴイスト』観てきました。

egoist-movie.com

地元上映館は小さいスクリーンだったけど、席はほぼいっぱいだった! (あくまで見た目で、ですが)女性のお客さんはひとりで、男性はカップルで観にきてる人が多いのが印象的だった。けっこう年齢層も高かった。

(以下、ネタバレあります)

見た直後の感想は…私としてはもう、ただ、悲しかった。

末永くふたりと、お母さんとで3人で暮してほしかった。なんで幸せになれないんですか…! 心が通い合う幸せは伝わってきたけど、あの結末でよかった...とは言えないぞ!? と、脳内で審議が始まった。

大きなテーマは、浩輔と龍太という同性カップルの出会いと恋愛です。ゲイコミュニティ「にしかない」文化(出会う方法やセックスの作法など)を見る作品であることは間違いないです。そこは純粋に興味本位で、シッカリどきどきして見てる自分がいました。

前半に描かれる浩輔の華やかな仕事や、友人いっぱいいる楽しそうなプライベートって、メディアが取り上げやすい従来からあるゲイのイメージよりの姿だったなって感じました。浩輔はゲイの己ってのをすでに一定確立して自信と経済力を持つ、無敵なタイプの人として登場する。(子どものころ壮絶な経験をした事はかいま見える...それを乗り越えてきた人なんだなって)いや実際、正直あこがれる。こういう暮らししてみたい...て思った。

だけど、龍太というまったくちがう人生を歩んできた恋人ができて「ゆさぶり」と変化が生じる。やっぱりだんだん、性別と世代と、どんな親の下に生まれたか、によって生じてしまった、経済格差が表にあらわれる。これは、「今このとき」を舞台にした作品をつくるとき真摯な作り手が向き合う、描かれるべき題材なんだと思いました。

龍太の家は、父親の浮気で破綻し母子家庭になったことで病気や窮乏、そこからの龍太の教育機会の損失など、大変な暮らしをしいられてきた。龍太の家の状況って、「男女の『ふつうの』結婚が精神的な幸せも生活の保障も、してくれるものではない。」 という象徴に感じられたんです。男と女の親がいて、そのふたりの血を引く子どもがいて、みんなでいっしょに住む...という、模範的規範的な家族のモデルから、はずれたとたん、運が悪かったね、自己責任ですね、で、取りこぼされていく。そういう社会に生きているんだ...ということを突きつけられる。

私が悲しかったのは、観終えた瞬間に「同性婚が出来て、浩輔と龍太が結婚して法的パートナーになれたら、龍太とお母さんを扶養して、龍太も死なずに済んだのにな」って、思ってしまった、まさにそのこと。

上手く言えないんですけど、「同性でも結婚できればな~」と思った後で、すぐ「なんで結婚しないと、家族の資格を得られないんだ?」と、「自己反論」というか、はっとして、なんか一見作品に啓蒙された良い発想だけど、「傲慢だな?」と思ったんです。

現状、男女にとってすらそれほど良いものじゃないはずの、この結婚という制度を、同性のカップルに「あなたたちにもこの権利をわけてあげますよ。認めてあげますよ」 というのは…超「上から目線」じゃない? なんでそんな、結婚にこだわらなきゃいけないんだ。そのこだわりって根強いけど、どこから来てるんだ...と、自問しました。

法的に結婚できないために受けている法的な不利益・侵害されている権利を、早期にすべての人に、それを求めるために、私は国による同性婚の法整備に賛成です。それすら実現できていない中で、まず目指すのは、そこ! です。

で、その先に、過激と思われるかもしれませんが 「結婚がなくなる」 社会があればいいな! と、けっこう強く願っています。(最初「結婚制度を壊す」と書いたんですけど、それは強すぎるかな、と思って、「なくなる」にしました。)

ひとりで生きていくことも、自分が産みの親でない子どもたちでも、3人以上・もっとたくさんの他人の大人が共に暮らすことも。ぜんぶが「家族だね」であればいいのに、って。

 

うーん、伝わりますかね...。この辺はもっともっと考えていかないと、と思います。

 

それと、龍太と母親が暮らす古いアパートの、噎せる様な生活感とか、阿川さん演じる母親のクドイくらいの、「こういうカーチャンいるいる!」というリアリティが、「クィアの人々は隣の部屋に住んでいる、そしてあなたの子がそうである」ということの…なんていうんだろう、宣言? だったなと思います。

 

好き勝手書き散らしてしまいましたが、鈴木亮平さんが 「きっと間違いも正解もなくて、観た方それぞれが、それぞれの感じ方で感じていただければ嬉しいです。」と仰られたことに甘え、書いてみました。

鈴木さんの繊細な、演技ではないような自然な演技・体温が伝わってくるようなお互いへの触れ方・会話のシーンが、ほんとうに素敵です。龍太のお母さんのお見舞に行ってトイレで眉のメイクする手つき、顔つきが特に好き。あと龍太が小銭をばらまいちゃって拾う微笑ましいシーンが後であんなふうにリフレインされるなんて...とか...

あと、撮り方が常に登場人物の隣にたっているようなアングルで撮られていて独特なんですけど、私は鈴木さんの左耳のピアス穴がアップになるたびに、「えっちだな......」と思ってました。

つたなくても、フォロワー少ない者でも、何かしら反応し反響を届けることが、こうした作品が今後も生まれ、多くの人に観られて、何かを残す、変えていくちからになればいいなあ〜って思います。それはまあ、どんな商業作品も、次に繋げるために、感想や反響はたくさん送った方がいい、それはそうなんですけど。この映画は特にそうかなって。自分にとって…それこそ「エゴ」ですけど。

ひとを幸福にする「エゴ」ってなんだろう。そういう意志って存在するんだろうか。ということを考える映画でした。

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