ドアの猫穴

日々思うこと・感想文・気軽に出来るボランティア情報とか書きます。

『子ども科学電話相談』回答者の先生の著書を読んでみる。《2》

2回目は キャラクターの立ちっぷりでは回答者中で一、二を争うと思われる、川上和人先生の本『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』です。

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

  • 作者:川上 和人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  

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打てば響くポンポンとした返し、質問したお子さんの自尊心を大事にする褒め上手なところなど「頭がいいとはこういうことか!」としみじみ感じる、ひとの話の聞き方・応え方が出来る川上先生。

 

先生が鳥の研究者になる最初のキッカケは風の谷のナウシカが好きだったからだそうです。…ガンダム好きが昂じてロボット・宇宙工学を志すように、環境学生態学分野には、ナウシカ好きから入ってきた人が相当いるらしい。ほ、ホントに…??

とにかく著者がサブカルチャー濃度濃い目な青春を送ってきたことは、文章から伝わってきます。コミュ力高い知的オタク・バード川上、というイメージが強まった。

私もアニメマンガ好きだから、全部元ネタがわかって笑いながら読んでいたけど、鳥のみに興味があって手に取った方には、伝わらない例えばっかりだな〜という危惧が…。 子ども向けというわけではない本書、相当にくだけた、ギリギリふざけているかいないかというさじ加減です。「カール(お菓子)が好き過ぎて、小笠原諸島の『カール』の在庫を食べつくした。侵略的外来種のふるまいをしてしまった」とか ここだけ抜き出すとわけわかりませんね! 「頭の良い人が書く頭の悪い文章」です。誰もが書けない、真似すると火傷するぞ...。

 

こんなタイトルではありますが、川上先生は「子ども科学電話相談」で、お子さんから「鳥は本当に3歩歩くと忘れる『鳥頭』なんですか?」という質問があったときには「それはねえ、悪口!!悪口は良くないね!!」とはげしく憤りw 如何に鳥類が種の存続のために戦略を身につけ賢く生き残ってきたかを、熱く語っておられました。

まるで「鳥になり替わって」とでもいうように、鳥にとって大切な自然・生物相の危機を訴え、鳥という生物が持つポテンシャル、不思議さ面白さをあまねく世に知らしめる、私は広報官である! という自負をしておられるように感じます。

 

ようするに 鳥が大好き、偏愛しているのです。(特に鳥の骨格が好きだそうです)少しツンデレだけど。

 

言われてみれば...という新たな視点をいただいたのは、

 

「鳥、実はあんまり飛んでない」

「飛ぶことはとてもエネルギーがいるので鳥もできれば飛びたくない」

ということでした。ええー...!? (解説を読めば納得なのですが)

 

小笠原諸島で鳥のDNAを調べたら 祖先はずっと遠くの八重山諸島から飛んできた系統だとわかったけど、飛んでいけばすぐの数キロしか離れてない隣の島にはいない、いつまでたっても棲みつかないとか...不思議ですね!

 

調査研究のために行った南硫黄島西之島など 絶海の孤島の華麗なる過酷なサバイバルライフが面白すぎました。いや大変だけど...。無人島に上陸し調査するために、水泳やクライミングのトレーニングを積まねばならず、上陸すれば耳に巨大蛾だの 口を開けばハエが飛び込むだの、落石を避けながら器用に寝る術を身につける(崖の下にしか平らな場所がないから)だの...。

火山活動が活発な離島で、噴火によって地表が溶岩に覆われた後、再び植物が生え失われた生物相を獲得していく過程には 海を越えて飛んできて営巣し、繁殖できる鳥が、とても重要な役割を果たしている、ということもよくわかりました。

 

 次回は 地質学者・西本昌司先生の本です!

街の中で見つかる「すごい石」

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