ドアの猫穴

日々思うこと・感想文・気軽に出来るボランティア情報とか書きます。

映画『太陽』を観ました

最近の主食はお義姉さんの家から送ってもらったトウキビと新じゃがです。

気分はインカ文明の人です。 

 

先週の土曜は特撮オンリーイベントに行った後、映画『太陽』を観ました。

オンリーは予想以上の人出で驚きました。

同人系イベントでこれだけ列に並んだのも久しぶり。

でも面白い本が買えたし、オンラインでお世話になっている方にもごあいさつできたし、楽しかったです~。

 

それから『太陽』を上映してる銀座の映画館に行きました。

上映している場所が限られてるので、全国ロードショー作品とは比較できませんが

始まってからだいぶ経っているにも関わらずほぼ満席。

クチコミの力ってすごいな~。

(以下、ネタバレ感想)

映画なんだけれど後味は詩のような、抽象画のような不思議な感じでした。

こんなに客観的に、だけど優しい視線で天皇ヒロヒトという存在を描けたのは

日本人でもアメリカ人でもなく、ロシア人の監督だったからなのかもしれない。

これはイッセー尾形が演じるフィクションの天皇なのだと理解しつつ、

現実の天皇もこんな人柄であっただろう、そうであって欲しいと思いたくなりました。

もう、ヒロヒトはお茶目さんで、不器用でかわいくて。守ってあげたくなっちゃうのです。不遜なのを承知で。

こんな愛らしい人が、意に沿わず現人神として崇められていたギャップ。

そんな時代の、悲しさや馬鹿馬鹿しさ。

 

セリフも動きもとても少ないです。パンフレットにシナリオが収まってしまうくらい。

物理的に音が少ない以上に、スクリーン表面に乳白色のガラスがかかったような、

直射ではない光が画面を包んでいて、まぼろしのような静かな空気が漂っていました。

息をするのがはばかられるくらいでした。そういうトコもロシア映画っぽい?

 

好きなシーンは、やっぱり皇后が天皇の肩をそっと抱きしめる場面。

夫婦というより母子のようなしぐさでヨシヨシってしてあげるのが、とてもあったかくて好きです。

あと、写真を撮りに来た米兵の一人の言葉「東京は廃墟ばかりでつまらない」が心に残りました。

勝者の無意識な無神経さ…後からジワジワっと怒りがこみ上げてくる…。

気を遣っている様ですれちがい続ける侍従たちと天皇の会話や、

それとは対照的に「あ、そう」とうなづき合うだけで心が通じる天皇と皇后のやりとり。

それぞれがすごくリアルでした。

   

『夕凪の街~』もそうなのですが、

戦争をテーマに含んでいても、観終わった後で全然気持ちが重くならない作品が生まれつつあるように思います。

目を背けたくなるようなショックがなく、後味がすごくおだやかでソフトだからこそ

観た人は平常心で「こんなにやさしい人たちがたくさんいるのに、それでもなぜ、戦争はなくならないの?」という問いを、

しっかり抱え続けることが出来るんじゃないかな、と思いました。