「良い本を与えて、子どもの情操を育てよう」という主張が前面に出すぎて、
少し押し付けがましい感じがしました。
でも、著者が好きなファンタジー小説の傾向はワタシとかなり似てますし
最近の色々なメディアを巻きこんだ、ビジュアル優先の魔法ファンタジーブームを
手放しで歓迎できない気持ちも、共感できます。
願望を満たし、都合の悪いものを消し去るために使う魔法では、
現実にあふれているいろいろな科学技術となんら変わらないものになってしまうのではないでしょうか?
そして自己利益の目的のためだけに使われる力は、科学であれ魔法であれ、
使う人の心やその人の住む世界を歪ませていくように思います。
そうした、力を濫用する危険性を、『ゲド戦記』の原作とかではストレートに説いてますね。
『はてしない物語』でも、主人公が何でも願いがかなう地位におぼれてしまって
「もう現実なんかいらない!」と言い、英雄から暴君に堕ちていく過程、
それに伴って魔法の国が荒廃していく気持ち悪さが印象的でした。
そういう
「魔法の世界は現実逃避の場所じゃないんだぜ!
倫理のないやつは死あるのみ、現実よりシビアだぜ!」
・・・って警告を忘れない、ファンタジーが好き。
おとぎ話の結末で愚か者がやたら残酷な死に方をするのも、
ちゃんと意味があってのことだと思うのですよ。
ロード・オブ・ザ・リングが公開されたとき、劇場である子供が
「つーかさー、ガンダルフが鳥に乗って指輪を火山に捨ててくれば終わるじゃん?
何で、めんどくせー旅すんの??」
「魔法使いなら、もっと攻撃魔法使えばいいのに」って言ってたのを聞いて、
ああ、ゲーム的な魔法に慣らされた感性って、こうなのか~と。
もう、泣きたいほど悲しかったのさ。
その子供に「それはね、これこれこういう意味があるんだよ」と説明してあげることはできても、
その子の身には染み込まないだろうなあ・・・。
何か作品に触れたときに感じた矛盾や疑問を「なぜ?? どうして??」と、考え続けたり
自分なりに意味付けして新しい物語を作っちゃうような想像力とかが
あったほうが楽しいと思うんだけどな。
「わからない=くだらない」と短絡的に決め付けない、こらえ性みたいなものを
自分の子供には育ててあげたいなあ、と思いますね~。