ドアの猫穴

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『安土往還記』感想。

『安土往還記』グイグイ引き込まれて、イッキに読み終えた!

エスズ会宣教師と共に日本に渡った、ジェノヴァ生まれの船員によって語られる『織田信長がいた日々』の回顧録、という体裁の小説です。

安土往還記 (新潮文庫)

・この信長公、現実主義 かつストイック過ぎて同時代人日本に生まれた人間では到底ついていけないのがわかる...いや現代でもこんな考え方の出来るリーダーはきっと稀だ。

・素直に「この安土城下に行きたい、住みたい」と思う! 活気あふれる都市の描写、次々建つ見たこともない建物、新しい時代の新しい街に、庶民がワクワクしてる熱気が伝わってくる! 毎日がお祭りみたい!

信長が座した、ほんの短い間だけだったとしても、まだ終わらない戦乱の中で 「今日、いま」「生きて、地上で」夢や理想を語れる、未来を見せてくれた街だったんだろうなって...そうイメージできる街の描写でした。

・からの、実質ラスト1ページですべて持っていく明智光秀とかいう「信長の意志に忠実すぎた」人! はああ~...この信長と光秀の関係はヤバいですわ。

・荒木殿も明智殿も...あの末路に至るまでの心理に ヨーロッパ人の視点で合理的・明晰な分析を加えられているのが良かった。

・とにかく文体が美しいのに読みやすい...信長公の全存在が、哲学と詩に昇華されているようでした(わからん

・信長公の命、築いたもの、とりまいたもの すべてが打ち上げ花火みたいに一瞬ではかなくて、悲しかった。でも、はかなかったから、輝いていたのかな。

・殿は決してカトリックの神を信じることは無いけれど、「信じる何かのために命を投げ打ち大海をも越える」と言う宣教師たち(特にヴァリニアーノ)の「生き様」に、強い興味を持ち敬意を払う。自分と同じものだと感じる。そういう「理解しないけど共感できる」という関係も胸熱で...ある種の、人間関係の理想を見ました。

信長の忍び』読者視点ですが、この主人公立場的には千鳥ちゃんに近いな~、とか。信長の傍近くにいて互いに信頼しているけれど何処の勢力にも所属はしていない感じとか。とても信長を ひとりの人、として観ているところが。

比叡山を焼いたときの「地獄に落ちるのはワシひとりでいい」という覚悟と孤独や、 長篠での「前に進む扉を開くのは意志の力だ」という言葉が、とても『安土往還記』の殿と重なりまして、重野先生と辻先生、信長像が近いところにあるなあ、って思いました。

とっても刺激的な「安土へのタイムトラベル」体験をさせていただける物語でした!!