今年も、アリオの大河ドラマ巡回展がはじまったぞ~! わ~!!
それもあるんですけど!
本題はTOHOシネマズに 『はい、泳げません』 を観に行ったんです。この木曜で上映終わっちゃうっていうから。
主演は長谷川博己さん&綾瀬はるかさんの 『八重の桜』 コンビです。
…正直なことを言えば、このお2人が出るんでなければ観に行こうと思わなかった。予告編がちょっと...感動、家族の絆、的なものを前面に出されると 退いてしまうたちなので。
でもお2人のお陰で観てよかった、と思いました。(以下、ネタバレです)
まずこちらの批評がとてもよかった...
すごく雑にまとめちゃうと 「傷つき、喪ったひとが 再起する物語」。
大学の哲学講師・小鳥遊雄司は、ずっと怖くて避けてきた泳ぐことに、ある日ポスターを見てなんとなく挑戦しようと思い立ち、最寄りのスイミングスクールへ見学に行きますが、そのまま流されて受講することになります。
この「なんとなく」 の背後にある本人にも自覚されていなかった動機は、徐々に明らかになってきます。
このスイミングスクールの女性インストラクター、スポ根ではなくて、理論だてて泳ぐ楽しさを教えられる人です。また自身が泳ぐことで人生をやり直し救われた体験をしてるので、その点、こころの傷と水への恐怖が絡みあっている小鳥遊氏とはとても相性の良い、運命的な出会いをした師と教え子だったのかもしれないですね。プールの中だけど、とても知的な教え方のやりとりが楽しい(まわりのおばさん受講生たちに、茶々を入れられつつ)。
小鳥遊氏の変化は 自身が泳げるようになっていくことと新たなパートナーとの再婚という、ふたつのできごとが並行してるんですけど、私はちょっとだけ出てきた、夫婦/婚姻関係以外の人間関係も、もっと見たかったなあ。そこにも助け舟やヒントがあった気がするので。
小鳥遊氏、気難しいけど教師としてとても熱意があって、教えること育てることが好きな、天職の人なんだなと。
教え子の日暮くんとのシーンが好き。一見講義で寝てばかりの不真面目そうな彼も、自分なりに何か抱えた課題があって取り組んでることが、伝わってくる。描写は少しですけど。一緒に黒板を消しながら、小鳥遊先生が日暮くんに向けるまなざし、笑顔のあたたかさ。彼の中に芽生えた、哲学への探求の小さな芽がうれしくて、彼を大事に育てたい…という心にあふれた、あのまなざしが大好きです。どこかで息子と教え子たちを重ねたりもしてたのかもしれません。日暮くんが見出した「生きることの意味」が、その後の小鳥遊氏の変化にも、重なっていくし。
(小林薫さんが演じる心理学教授と、友人のメタリカTシャツ坊主、もっとくれ…っ! と思いましたw)
ひとがずっと悲しい出来事の中に囚われ、進めなくなってしまうのは 衝撃が大きかったためでもあるけれど 「悲しみを分かち合える人がいない」 こともおおきな要因だと思います。
小鳥遊氏の悲しみは息子を喪ったという事実それ以上に 「息子の最期の記憶がない」 ということだったんじゃないかと。
それがどんな苦しい現実でも、記憶があったなら。葬いの時に妻と一緒に涙を流すことができていたら、彼女も小鳥遊氏も 互いを責め合って、孤独を募らせることはなかったんじゃないか。
水の中という 身近な異世界のような場所で。「泣いてもわからない」場所で。体と心を預けられるコーチがいる場所で。ようやく、息子の生まれたときから、川辺で遊んだときまでの記憶をたどれるようになって。喪われた息子の命と同じくらい大切な 「そのときの記憶」 を取り戻して。そうして、はじめて泣けたんだと思いました。「そこに忘れていたものがあるよ」と呼ぶ、自分の無意識の声に導かれて、なんとなく、泳げるようになりたい と願ったのかもしれない...。
でもとても、一人では向き合えない(映像で観てても、ウッ...と苦しくなる)まさに心が溺れて死んでしまうかもしれない過去だったから。「私が助けます」 と約束してくれるコーチの存在が、必要だったんだと思います。
水の中で泣けた経験を経て、かつて夫婦だったふたりは今度は水の外で、ふたりで一緒に思い出し、「分かち合って」 泣けるようになりました。そして、それぞれの新しい生活に向かって踏み出せました。
ふたりで泣いたとき、かつてあった家族のもとへ、息子の魂は「帰って」きたんだな...。
あと先に書いたけど、ハセヒロさん目当てで観に行ったけど、途中で小鳥遊雄司が「演:長谷川博己」であることを、忘れました。
「肌キレイ...」とか思う余裕があったのは トイレのシーン辺り(※けっこう最初)まででw 後は自分と同世代の、身近な人間関係に悩み難儀な問題を抱えた、どこかにいそうな、ひとりの人に見えてきて。かわいいしかっこいいけどホント「ただの人」に見えたんですよね...。
それは自分にとってこの 『はい、泳げません』 が、すごくおもしろかった、世界に没入できた、ってことなんだと思う。
特に現代が舞台の話で、「好きな俳優さんに演じられている役」 じゃなく 「その世界の人だ」 って感じられたという事は 何かこうきっと、作り手の人たちもそう感じてほしいんじゃないかな、って。…これは余計なお世話か。
少しファンタジー味もあるけど テーマはとても身近で、「わたしのこと」 のように感じられた。ステキな映画でした~!