ドアの猫穴

日々思うこと・感想文・気軽に出来るボランティア情報とか書きます。

『決戦!設楽原 武田軍vs.織田・徳川軍』 読みました。

決戦! シリーズ、次は設楽原の戦いです。

 

 『信長の忍び』 単行本12~13巻でも 設楽原(ずっと「長篠」と習ってきたので、どうしてもそのほうが通りが良いですが)の戦いのくだりは特に好きです。

 

信長の忍び 13 (ヤングアニマルコミックス)

信長の忍び 13 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

長篠の戦い - Wikipedia

 

信忍では主人公の千鳥ちゃんが、夜通しで山道を越えて武田軍の背後を守る鳶ヶ巣山砦に奇襲をかける、酒井忠次の軍に加わります。ライバルの武田の忍び・望月千代女とのガチンコ勝負もかっこいい。本書でも 『けもの道』というお話で チーム酒井の苦労を重ねた夜行軍がフューチャーされていて嬉しかったです。(そして道案内がコチラも女性の役目という)この作戦を知って酒井忠次が好きになったんですよ。信長が一度軍議でこの策を却下したふりをして、情報が洩れないよう、改めてコッソリ命じるくだりも含めて燃えますね!

この奇襲が成功していなかったら、ほんらい長篠城の奪還が主目的だった勝頼の軍がわざわざ無理な決戦に挑むことは避けて退いただろうな(武田の重臣ほとんど、総力戦避けるべしという意見だった)、そしたら武田家の運命は大きく変わっていただろうなと思う。

武田サイドの武将の話  - 山県さん、真田の信綱・昌輝兄弟など- は どれも結末がわかっているだけに読むのがつらかったけど、それぞれに最後に命を燃やし尽くして 雄雄しく散っていくのが...。読者も心してそれを見届けなくてはという気持ちになりました。

 

それに反するようなことに気づいたのですが 鉄砲という武器がもたらしたのは「名誉ある死の消失」なのかな...って。

長篠の代名詞とも言える連射戦法を見た徳川方のある武士が、弾丸が降りそそぐ中、ばたばた倒れてゆく敵兵を見て 「誰が誰を討ち取ったのか、まるでわからない。」「これでは誰の首もあげられないではないか。」と嘆くのが印象的で。自軍が勝ったのに空虚である、と。

それが当時の武士としてのまっとうな感情だったんだろう。でも、その空虚な気持ちは古いものとなって置き忘れられていく運命にある。

鉄砲が武器として普及した戦場で起きたのは、『ひとりひとりの死の無意味化』 だと感じます。

勝者も敗者も「名と顔」を剥奪され 殺す際のリスクと罪悪感を減らす代わりに、個人の名誉も消えていく。

それこそこの本に出てきたような 戦う「理由」を抱えた、武田の武将のような人々の「死にざま」が「古臭い」ものになってしまう。科学技術が、道具が、人も「道具化」していく。

時がたち より「効率的に」、「こちらの手を汚さず」、「損害は限りなくゼロに・相手は壊滅的につぶす」 ことを目的とした、大量殺戮武器の時代が世界的に到来しますが

その芽はすでに この設楽原の戦跡に、芽吹いている様に見えました。 

 

nekoana.hatenablog.com

 

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